前回、訪問の施術の必要性を書かせていただきました。
鍼灸学校時代のボディケア施術の経験もあるクラスメイトでも、実際の施術は心配!きちんとお体に負担ないように施術できるかどうかと不安な気持ちが起こるのももっともというお話でもありました。
実際私も雇われの訪問施術者時代、デビューしたては高齢の方へどの程度の力加減で手術すればいいのか、強く施術してしまって痛い思いをさせないか、色々とても不安でした。
高齢の方への施術は中高年以下の方への施術と違って、気をつけないといけないことが多くあります。
若い人と比べて女性は特に骨折のリスクが高いことや、血管も年齢とともに脆くなっているため、施術部位に応じた細やかな圧の調整や痛みが出てないかなど注意して行うことは特に大切なものとなります。
また、円背の菅座様も多いことを考えて、関節運動や揉みほぐしをする時はうつ伏せの施術は行わず、横向きと仰向けでアプローチしていきます。
更に横向きにもなれない方や車椅子の方に車椅子に座ったままで施術をするというシーンも出てきたりしますので、その方のお体をどのように診ていきたいか、それを今の姿勢のままでどのように治療を行うのかを考え続ける必要が出てくると思います。
加えて独立して勤務していた治療院を辞めるとなったりすると特に、雇われ時代と違って施術方針を聞ける先輩もいないですし、その患者様によってどういった施術をすれば良いのかの見極めも不安に思うところが多いはずです。
これに関しては結局、おおごとにならない程度にトライアンドエラーの経験を重ねるのが一番です。
力加減に関しては、患者様によって全く異なりますし、同じ方でもその日のご体調でいつものように押しても痛みが出てしまうこともあります。
なのでまずは初回体験などの施術開始時に「物足りないかもしれないけれどお互い慣れるまでは様子見をしながらの力加減・刺激量となります」と、きちんと説明や意思疎通をした上で、ソフトな施術からスタートします。
ここの意思疎通ができていないと、弱い刺激量や圧では満足感を感じてもらうことが出来ずに施術を担当できないですし、そこを危惧してしっかり圧や刺激量で施術してしまったりすると、慣れていないのもあって痛みなどの支障が出てしまうこともあるからです。
しっかり相手の様子を伺い、強くないか痛くないかなど細かく聞きながらの施術では何より大切です。
初めはソフトな刺激量で始まったとしても、きちんと強さや痛みが出ていないかを都度お伺いし、様々なご希望や喜ばれポイントを見定めながら何度も施術していくと、その方に合った力加減が自ずと分かっていくものです。
私の経験をふまえた考え方としては、
高齢の方に施術を始める前に不安に思ってこれぐらいの圧なんじゃないかと想像していたより、一般の患者さん(高齢ではない方々)と近い圧でのアプローチも可能なことが多いです。
ただやはり骨折や痛みが出るリスクは高いため、先に述べたしっかり部位別に細かくヒアリングしながら、かつその方の心地よいと感じていただけるような適正な圧を探していくことになります。
繰り返しとなりますが、同じ患者さんでも日が変われば体調も変わりますので、いつもの圧で施術しても痛めてしまうこともありますので、痛みなどでないかのヒアリングは都度細かく行ってください。
そんな中でも、女性の高齢者の方は圧迫骨折のリスクが高いので体幹への施術は特に注意して弱めに行う配慮はリスクマネジメント的にも必要と考えています。
かといって恐々と弱い施術で患者様の方に不満がたまって別のサービスに移行されてしまったり、施術中止となることも考えられますので、女性施術者の強みの繊細な施術でしっかりニーズを拾ってあげてください。
加えて、聞き方にもコツがあると考えています。
例えば、
「痛くないですか?」という質問だと、痛くはないけど不快な感覚がある時には患者さんの違和感を取りこぼしてしまう可能性がありますよね。
なので私は力加減を伺う時は「嫌じゃないですか?」と聞くことにしています。
他にも認知症が強い方々は、質問に正しく答えられないことが普通です。
そういった方へは体の反応から判断したり、ご家族から細かくヒアリングを行いなどの配慮も必要となってきます。
と、ここまで色々書かせていただきましたが、治療の不安に関して結局は、さまざまな患者さんのケースをひとつひとつ積み重ねていくのが一番です。
ある程度の治療の方向性を見立てて実行してみて、変化が出るかをフィードバックして更に次の施術をしていく。
これに関しては店舗等で行う施術と考え方は変わらないのではないでしょうか。
ご自分の力が及ばなければ、研修や勉強会に参加するなどして研鑽も怠らないようにしたいですね。
当協会は鍼灸の施術は行えるけれど、鍼やお灸では嫌だという方への施術講習も行っております。
また、寝たきりの方や車椅子のままの施術、うつ伏せや横向きになれない方への施術など少し特殊なアプローチ方法が必要とる施術の講習もございますので是非ご利用いただいて、安心して患者様に向き合っていただければと思います。